プラスのためにマイナスがある
気象予報士の天達武史さんの一言である。「PERSONNE」というサイトにある一流人たちの言葉の中に見つけた。最近触れた長文の言葉を端的に紹介したくて、それに見合う言葉を探していたら、偶然目に止まったのがこれだった。まさに!
東京パラリンピックが閉会した。
物議を醸した2020東京オリンピック・パラリンピックは、世界的にも大きな意義ある大会だったと思う。
いろいろな人が指摘しているように、創設者のクーベルタンの理念である「スポーツによる健全な人間形成と世界平和」の原点に立ち返ったであろう本大会では、勝敗以上の感動を与えてくれた。
とりわけパラリンピック選手団の強靭な精神力と、人間の計り知れない可能性には驚愕した。
彼らはまさに、マイナスをプラスに変えた人たちだ。
孟子の言葉が浮かぶ。
―― 天のまさに大任をこの人に降さんとするや、必ずその心志を苦しめ、その筋骨を労せしめ、その体膚を餓えしめ、その身を空乏にし、おこなうこと、そのなさんとする所に払乱せしむ。
(天が人に大任を降そうとする時、必ずまず、その心志を苦しめ、その筋骨を疲れさせ、その体を飢えさせ、その身を窮乏させ、行う事為す事に幾多の障害を与える)
彼らほどの大任ではなくとも、人にはその人にあった試練が必ずある。
事を成した多くの人たちも声を揃えて言っているように、ピンチはチャンスであり、立ちはだかる壁は、越えられる可能性のある人の前にしか現れない。
コンプレックスや足かせとなっているものなど、一見マイナスと思えることも、成長を促すプラスの要素。
そんな当たり前だけど大切なことを、われわれはつい忘れがちになる。
それを、パラリンピックの選手たちが身をもって知らせてくれたような気がする。
ないものを嘆くより、あるものを育み、生かしてみよう。
マイナスはプラスに化ける、天からのご褒美。
今回は「おかげさま」を紹介。「おかげさまで、なんとか無事に…」と、普段なにげなく使っている「おかげさま」は、外国語では表現しづらい日本ならではの言葉です。続きは……。
(210907 第745回)