日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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紺碧の将

萬事入精(ばんじにっせい)

住友政友

 住友家初代・住友政友の言葉を紹介。政友が商いの心得として説いた「文殊院旨意書」の冒頭がこれだ。

 幼い頃から僧籍に入り修行を受け、「文殊院」の名で市井の人々に教えを説きつづけた政友は、宗派の統合とともに員外沙門となって違う道から人々の手助けをしようと書物と薬の商いを始めた。これが住友の始まりである(住友グループ広報委員会ホームページより)。

 住友の発展は「文殊院旨意書」という事業精神の上に成り立っている。

 

 ―― 商事は言うに及ばず候へ共、萬事精に入れられるべく候

(商売はいうまでもないが、何事も粗略にせず、すべてのことについて心を込めて丁寧慎重に励むように)

 

 と始まる「文殊院旨意書」には、商売はいうまでもなく、人としての心構え、人と関わるときの心構えが記されている。

 勝手ながら全文を現代語訳で紹介させてもらおう。

 

 ―― 相場より安いものが持ち込まれても、出所がわからないものは盗品と心得よ

 ―― 誰であろうと宿を貸したり、物を預かったりするな

 ―― 他人の仲介や保証はするな

 ―― 掛け売り、掛け買いはするな

 ―― 他人がどのようなことを言っても短気になって言い争うようなことはせずに、繰り返し詳しく説明するように

 

 これらの心得が後々まで受け継がれることになったのも、ひとえに政友の誠実さと慈愛に満ちた人柄ゆえのこと。

 世のため人のためには労を惜しまず、身を粉にして社会のために尽力する姿勢に多くの人が感銘を受け、後に続く者たちがそれに倣っていったからだ。

 

 仏門に身を置かなくても人を助けられる。

 薬は人の躰を救い、書籍は人の心を救う。

 そう考えて「薬種・書林」の商売を始めたという。

 

「文殊院旨意書」を根幹に、住友は400年以上もの歴史を作り上げた。

 時代の変化とともに人の考えや社会全体も様変わりするだろうが、人が生きているかぎり「人としての心構え」は、そう大きく変わるものではない。

 

 萬事入精。

 なにはともあれ、まずは人間磨きからはじめよう。

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

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(210913 第747回)

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