日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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紺碧の将

簡単にはやめられないことを息つぎしながらつづけよう

皆川明

 日本のファンション業界では最も早くSDGsに取り組んだのではないかと思うファッションブランド「ミナ ペルホネン」。その代表でありデザイナーの皆川明氏の人生哲学が詰まった『生きる はたらく つくる』にこの言葉はある。25年以上も前から取り組んでいた彼のSDGsの発想は、不変の真理だからこそ、いつの時代も変わらず新しい。
 
 日本において、いまに続く古くて新しいものの代表といえば、伊勢神宮だろうか。
 2000年前の神話の世界にはじまり、科学技術の発展によって宇宙旅行も可能になった令和の現代も、変わらず神々のすまう社として同じ場所に同じ姿で鎮座している。
 20年ごとに社殿を新築する式年遷宮が、それを可能にした。
 
 しかし、伊勢神宮よりもさらに古いものがある。
 それは、生命。
 
 今を生きるすべての生命は、気の遠くなるほどの時間をかけて連綿と受け継がれてきたことの証でもある。
 もしもどこかで途切れていたら、いま、ここに生きている保証はない。
 
 この世に生まれた以上、生きることは簡単にやめられることではない。
 だとしたら、生きていくための方法を考えよう。
 誰でもない、自分がこれなら生きていけるという方法を。
 
「苦手なことだからこそ、時間をかけてつづけることができる。苦手なことほど簡単にはやめられない。簡単にやめられないことを息つぎしながらつづけよう」
 
 皆川さんは、アルバイトで裾上げなどの手伝いをしたときに、最初にそう思ったのだそうだ。
 競争相手がたくさんいる海に入れば、周りに惑わされてフォームが乱れるかもしれないし、誰かのフォームに似てしまうかもしれない。
 それよりも、時間をかけ、試行錯誤を重ねて、自分の泳ぎかたを発見し、身につけたほうがいい。
 息長く泳ぐには、自分にふさわしいフォームがあるはずだし、そのフォームを身につけたら、さらにそれを磨いていけばいいと、皆川さんは自分の生きる方法、生かす方法を考えた。
 
 泳ぎつづけるには息つぎは必須。
 息つぎで呼吸を整え、フォームの調整をしながら自分らしく生きていけばいいのだ。

 時間がかかってもいい。

 人生を自分のフォームで泳ぎ切ろう。

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

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