人はみずからの長所を必要とする企業で成功するが、短所をうまく活用してくれる企業でも秀でた存在になれる
近代民主主義思想の古典『アメリカのデモクラシー』の著者、アレクシス・ド・トクヴィルの言葉を紹介。名前に貴族の称号である「ド」がつくことでもわかるように、トクヴィルはフランス貴族出身の政治家であり思想家でもある。福澤諭吉も彼の著書を読んだ一人らしい。
トクヴィルの言葉をそのまま受け止めるなら、企業というのは最も長所を必要とする組織だろう。
だが、必ずしも長所が成功につながるとは限らない。
組織が大きければ、同じような長所を持つ人材は他にもたくさんいるはず。
よほど強烈な長所でなければ、その他大勢と同じ。
それなら、短所をうまく活用してくれる企業に身を置いた方がいい。
とは言え、そんな企業がすぐに見つかるはずはない。
それなら、まずは自分で短所をとことん極めてみてはどうだろう。
深く深く掘り下げていけば、いつかどこかの地上で芽を出すかもしれない。
刈られても刈られても地下で毛根を伸ばし続ける雑草のように、短所をうまく生かすのだ。
そうすれば華やかな地上の生存競争に巻き込まれずにすむし、うまくいけば強い生命力を持った薬草のようになれるかもしれない。
世の中を見渡してみても、短所を持った人材をうまく活用した企業は信頼も信用も厚いように思う。
個人的にみても、有名無名問わず、短所をうまく生かして秀でた存在になっている人は多い。
長所は短所に、短所は長所にもなる。
時代や場所が変われば、その変容は顕著である。
誰がみても良いとわかる長所にしか目がいかないというのは、あまりに表面的。
短所を秀でたものとして特化すれば、その価値は計り知れない。
秀才とは、きっとその価値に気づいた人なのだろう。
秀才になりたいかどうかは別として、ひとまず見過ごされてしまうところに注目してみよう。
今まで気づかなかった宝の原石が見つかるかもしれない。
今回は「木枯らし」を紹介。
秋の終わりと冬の始まりを知らせる冷たい北風が、「木枯らし」です。続きは……。
(211204 第765回)