葉を欠いて根を断つな
数ある諺のひとつ。言い方ちがいの「葉を截(た)ちて根を枯らす」もあるが、こうなるともちろん意味も変わる。論語などと同じように、使い方、使う人間によって言葉は薬にも毒にもなる。
一本の木を育てるのは容易ではないが、枯らすのはなんてことない。
枝や葉をすべて切り落としてしまえばいい。
剪定をまちがえると、木はちゃんと育たないという。
剪定の時期や、どの枝葉を切るか、それが木の健康を左右する。
根から吸い上げた水分を、葉が水蒸気に変えて発散し、樹体の水分調節を行っている。そのとき、水に溶けた養分も体全体にいきわたり、水蒸気となって発散される。それが雨になって、やがてまた・・・という循環が粛々と行われている。
さらに、太陽の光をたっぷりあびて光合成をし、呼吸をしながら二酸化酸素と酸素の入れ替えをするのも葉の役目である。
この働きがなければ木は育たないし、ましてや酸素を必要とする動物も生きられない。
「葉を截(た)ちて根を枯らす」というのは、つまり戦略である。
敵をつぶそうとするなら、まずは助けとなっている部分を排除しろ、標的をつぶすのはそれからだという。
それが「葉を欠いて根を断つな」となれば、自分ごとにも考えられる。
どっしりと根を張るには、枝葉は欠かせない。
枝葉となる知識や知恵をつけ、根っこに養分を蓄える。
太陽の光を求めるように、音楽や本、映画、歴史、社会情勢など、さまざまなものに触れて教養を身につけるのだ。
そして、時期をみて、必要なものとそうでないものを選り分け、剪定をする。
そうやって、自分という樹をしっかりと大地に立たせる。
枝葉なくして根は育たない。
大空に手を広げて、自分という樹を育てよう。
今回は「心葉」を紹介。
心葉とは、「心」あるいは「心ばえ」のこと。あふれる想いや感情のことです。そのむかし、人は鳥のように音をつなげた歌で意思の疎通をしていたといいます。続きは……。
(220704 第801回)