『復活の力』を生み出していくのは、感謝の気持ちを忘れないこと
「プロボクサー村田諒太」を引退した、村田諒太さんの言葉を紹介。これは彼の読書感想である。アスリート随一の読書家としても知られる村田さんは、雑誌『Number』で「王者の本棚」という読書コラムを連載中。そこで紹介していた『復活の力』(長田渚左著/新潮新書)で、スポーツ選手たちの復活力の源についてこう語っていた。
「アスリートは言わば演者。陰で支えてくれる人たちがいなければ、スポットライトを浴びて輝くことはできません」
本の中に紹介されていたアスリートたちの復活力に共感するのは、自身も彼らと同じ経験を何度も経験していたから。
プロ生活を振り返ったとき、村田さんは多くの人たちに支えられていたことをあらためて噛み締め、心の中で深々と頭を垂れたという。
「プロの世界で自分が戦ってこれたのも、本当にみなさんの力があったからなんです。そう思うと感謝しかなくて、それ以外の言葉が見つかりませんでした」
ジムのスタッフ、関係者、スポンサー、ボクシング仲間、応援してくれるファン、友人知人、そして家族。
どれほど多くの人たちに支えられてきたことか……。
苦しさも辛さも、自分ひとりだけが背負っていたわけではなかった。
同じように、周りの人たちも辛さや苦しさを味わっていたはず。
見えるところで、見えないところで。
美人画で有名な日本画家の上村松園は、「無理をゆるされて来たことについて、誰にともなくその事を感謝することがある」と随筆に残している。
妥協のない作品を描きつつも、締め切りに間に合うよう何日も徹夜をしたという上村松園。
そうしたのは、すべて自分の意気地だと。
無理をするのは、他でもない自分のため。
誰かに強要されてする無理は続かないけれど、意地でもやってみせるとする無理は、理を超えた力を発揮する。
では、その理を超える意気地はどこからくるのか。
見えない力、影で支えてくれる誰かや何かから受け取るエネルギーだろう。
上村松園のエネルギーの源は、産み育て、生活の一切を引き受け、画業に専念させてくれた母だった。
感謝の力は計り知れない。
当たり前で、ありきたりだが、「ありがとう」という感謝の気持ちを、心に深く刻んでおこうと思う。
なんどでも蘇るように。
今回は「万緑」を紹介。
目に青葉山ほととぎす初鰹……と、思わず口づさんでしまう初夏。字面からも、なんとなく想像がつくでしょう。見わたすかぎり青々と緑が生い茂った景色が「万緑」です。続きは……。
(230618 第844回)