どうして私一人が贅沢できるだろうか
徳川家康
家康はよくいえば質実剛健、悪くいえば吝嗇、いわゆるケチで知られている。それまで天下人だった秀吉が贅の限りを尽くしていたから余計に際立つ。
もちろん、彼の性分なのだろう。が、それだけとは言い切れない。
こんなエピソードがある。家康は麦飯ばかり食べていた。それを見て周りの者たちはケチが過ぎると考えた。
そこで一計を案じ、米の飯の上に少しだけ麦飯を載せて家康に供した。
家康は怒った。おまえたちはおれの気持ちがわかっていない、と。
家康は、みなが粗末な食事をしているのに自分だけ贅沢することに耐えられなかったのである。麦飯は健康を考えてのことでもあったが、それ以上に民のことを考えたうえでのことだった。
その証拠に、家康は天下をとってから途方もない財力を得たが、終生、質素な生活が変わることはなかった。
上に立つ者、まずは率先垂範。自分だけ贅沢して満足しているような人は、人の上に立つ器ではない。
ということで、家康の価値観や生活信条も描いた『紺碧の将』のPRでもありました。