本心からそうなりたいと望むのであれば、すでに何かを始めている
小林克也さんが元気だ。そう、ロックファンなら誰もが知っている、あの人である。いまでも「ベストヒットUSA」という番組の司会者を務めているが、あの歳になっても変わらず〝音楽ラブ♥〟を貫いている。以前のようにスラスラと英語が出てこないときがあるが、それも愛嬌。まさに愉しく人生をおくっているお手本である。
そんな彼が若い頃、ラジオで語った言葉が忘れられない。
若いリスナーがこう訊いた。
「小林さんのように英語が話せるようになりたいのですが、どうすればいいですか」
彼はリスナーにこう尋ねた。
「で、あなたはいま、どんな勉強をしているのですか」
「まだしていません。これからしようと思っているんです」
すると、小林克也さんは間髪入れず、こう言った。
「あなたが英語を話せるようになれるとは思えませんね。ほんとうに話したいのであれば、すでになんらかの勉強をしているはずですから」
それを聞いて、合点した。自分にもそれらしきことがあったからだ。
本心からそれを望むのであれば、すでに始めている。そのうえで、なんらかの壁に当たったとき、アドバイスを乞うのはいいだろう。そのときのアドバイスは身にしみて理解できるはずだ。しかし、英会話スクールに入会してから英語の勉強を始めたいというような人はほぼまちがいなく挫折している。本心から話せるようになりたいとは思っていないからだ。その証拠に、全国に英会話教室はあまたあるが、英語を話せる日本人はほとんどいない。
現代において、学習するツールは山ほどある。あとは、それらをどう活用するか、であろう。学びたい人にとって、私たちは恵まれ過ぎているほど恵まれているのだから。
(241203 第869回)
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