ずっと幸せでいるなんてありえない。でも、この山がここにあると思えることが大きな力になって今に続いている
鈴木ともこ
漫画家・鈴木ともこさんの言葉。蝶ヶ岳〜常念岳側から槍ヶ岳〜穂高連峰を見ながら彼女がつぶやいた言葉。
物事の真理は、ふとした言葉に宿ることが多い。これもそのひとつだろう。
人間は幸せと不幸を感じ分けることのできる生き物である。ちょっとしたことで両者の間を行き来する。
自分が幸せだと思えるためにはなんらかの寄る辺が要る。親しい人であったり境遇であったり仕事であったり……。鈴木さんが素晴らしいのは、絶景を心の寄る辺にしていること。大変だなあと感じるとき、ふと脳裏に北アルプス連峰の山並みが映し出され、心の底からふつふつと力が湧き上がり、自分を支えてくれるという。絶景を見ることは心のなかに貯金をするものだと思っていたが、はからずも鈴木ともこさんがそれを裏づけてくれた。
さあ、自分だけの絶景を堪能しよう。
(241220 第870回)
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