好かれちゃいけない。「嫌な感じ」でなければいけない
岡本太郎
岡本太郎は放言癖のある人だった。半分以上はまじめに受け取る必要のない言葉といえるが、しばしば無視できない言葉に出くわす。掲出の言葉もそうだろう。
現代は、「面と向かったら、なるべく本音を言わない。そのかわり、匿名であれば、相手が死ぬほど攻撃する」という傾向がある。語尾が「〜ので」で終わってしまうのは言い切ることをはばかっているからだろうし、「拝見させていただく」など「いただく」の乱用は極力へりくだりたいという意思の現れだろう。
ところが、である。匿名性を帯びたとたん、野獣に変身する。SNSはその坩堝だ。私はSNSにはいっさい触れていないが、事情はおおむねわかる。
皮肉なことに「好かれちゃいけない」を貫けば、「ある人」には好かれるようになる。共鳴・共感が起こり得るのは、選別のその先であるのだから。それはごく少人数かもしれないが、SNSで何千人とつながるより価値のあるものだと思う。
さあ、怖がらないでどんどん嫌われよう。
(250325 第876回)
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