毎晩眠りにつくたび、私は死ぬ。そして翌朝、目をさますとき、生まれ変わる
マハトマ・ガンジー
一日一生の心づもりで生き抜いたのだろう。その凄絶な覚悟を正確に推し量ることはできないが、そういうふうにでも考えなければ生きた心地がしなかったにちがいない。
ガンジーはこうも言っている。
「過去をひきずる必要はない、朝目覚めたとき、あなたは新たな人生を歩む」
家康・秀忠・家光の三代にわたって仕えた怪僧・天海は長寿の秘訣を訊かれ、「思いを引きずらないことと毎日ケシの実を食べること」と答えているが、思いをひきずらないことがいかに難しいかを知っていてさらっと口にするところがニクイ。
「賢者は称賛にも批判にも動じない」という言葉もあるが、称賛されれば心が浮き、批判されれば心が憂くのは当たり前のこと。そのいずれにも動じない心を養うには、ひたすら自分のやるべきこと・好きなことに没頭する以外にないのではないか。
いつまでも若いと思っていたのに、気がつけば私も66歳。実質的にも法律的にもりっぱな高齢者である。与えられた命がいつまでなのかわからないが、先人たちの〝心操縦術〟を手本に、他者に惑わされることのない、風通しのいい日々を過ごしたい。
(250419 第877回)
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