この日光、この雲のない青空があり、生きてこれを眺めている間、わたしは不幸ではないと心の中で思いました。
アンネ・フランク
ナチスによるユダヤ人狩りから身を隠すため、2年間の「隠れ家生活」をしていたアンネ・フランクは、のちに『アンネの日記』として世界的大ベストセラーとなる日記のなかで、自身の心情を淡々と書きつづっている。
引用文はその一節。
たまに東京に出てみると、街の至るところで、いの一番に目に付くことがある。
立ち止まっているときも、歩いているときも、とにかく下ばかり向いている人が多すぎるのである。
その手が握りしめているのは、スマホ、携帯、ipod・・・。
人間は、地球の上で活かされている。頭上には輝く太陽がある。
とりわけ大都市に暮らす人々は、もうずいぶん前から、そういうことを気に留めない生活に慣れきってしまった。
一日いっぺんくらい、空を仰ぎ見よう。
雨や雪が降ったときだけじゃなくて。
朝起きたとき、風を肌に感じたとき。徹夜明けの始発電車に乗る前にも。
「青空を仰ぎ見ているだけで幸せ」
15にも満たない少女に、そうつぶやかせた空の青。
近すぎて、見失っている大切なものが、まだまだたくさんあるはずだ。
(130425第71回)