伝統とは形を継承することを言わず、その魂を、その精神を継承することを言う
嘉納治五郎
柔道の創始者・嘉納治五郎師範の言葉。
この言葉の意味は重い。なぜなら、日本は世界一歴史の長い国であるだけに、伝統と名のつくものがたくさんある。その伝統にどのように向き合い、どのように継いでいくのか。その本質が問われている。
山下泰裕氏は、ブルー柔道着が採用されることになった時、日本中が反対一色になったことを恥ずかしいと思ったという。たしかに、カラー柔道着導入はイヤなことだが、柔道が世界に普及するには避けて通れないことだと。そもそも、カラー柔道着は柔道の本質を脅かすものではないと。だから、消極的賛成だったという。結果的に、わかりやすくなってますます世界に普及している。それによって日本ファンも増えているはずだ。
山下氏の判断の根拠は、嘉納師範の示した伝統観だったではないだろうか。
不易流行と頑迷固陋は基本的に異なるのである。
(140908第84回)