後ろ向きで後ずさる。そうすれば、ぼちぼちでも前進できる
福島智
9歳で失明、18歳で聴力をも失った東京大学教授、福島智氏の言葉である。
著書『ぼくの命は言葉とともにある』から抜粋した。
彼は、自分の姿を見た人が「勇気をもらった」とか「すごいですね」と言ってくれることをありがたいとは思いつつ、それは買いかぶりだとも言い切る。
突然襲った「盲ろう」という極限状態を受け入れ、その中で闘うしかなく、そうなっていなければ自分はごくごく平凡な人間であっただろうと。
障害があろうがなかろうが、何かの壁にぶつかるのはみんな同じ。前向きになれるときも、そうでないときもある。
後ろ向きだっていいじゃないか。
無理矢理、前を向いて歩けなくなるより、後ろ向きでもやるべきことをやってそろりそろりと後ずさっていれば、結果的に少しずつ前進しているし、途中で回れ右して前を向けばそれでいい。
福島氏自身、そうやっていくつもの壁を乗り越えてきたという。
後ろ向きなら五感も鍛えられて一石二鳥。
前を向いているときよりも感覚が研ぎ澄まされて、新しい発見があるかもしれない。
(151022第131回)