一度、生まれたままの素直な気持ちにならんと、他人のいうことは理解できません
西岡常一
法隆寺金堂、法輪寺三重塔、薬師寺金堂などの復興を果たした最後の宮大工棟梁、西岡常一。
木を知り尽くしていた男は、人間をも知り尽くしていたのだろうか。
著書『木のいのち 木のこころ』に記されている西岡の言葉からは、まぎれもなく、木も人も同じ生き物であることがわかる。
松下幸之助も言っている。
「素直な心をもてば、強く正しく聡明な賢い人間になれる。素直になるということは神になることと同じ」だと。
素直になることは、口にするほどそう簡単ではない。
人間である時間が長ければ長いほど、知識も増えて知恵がつき、自意識や自尊心、欲得などが邪魔をして素直な心から遠ざかる。
生き物はもちろん、建築物も、科学もふくめ、すべてがこの自然のなかに置かれている。地球という自然から離れているわけではない。
だからこそ、どんなものでも自然であることが当たり前なのだ。
生まれたままの素直な気持ちは、そのまま自然の姿でもあるということ。
自然に背かなければ、他人の意見も素直に聞ける。
(151215 第147回)