だいたい、年齢なんて人間がつくったもの
熊田千佳慕
98歳まで現役で、虫や花の小さな世界を描き続けた細密画家、“プチ・ファーブル”こと熊田千佳慕氏の言葉。没後刊行された『私は虫である』から抜粋した。
「おかげさまで、もう死ぬまで老後がなくて。今も現役だから、僕には老後がありません」
急な展覧会などで作品を仕上げなければならなかったとき、80歳を過ぎていようが、90歳になっていようが、だれも千佳慕氏を年寄り扱いしなかったという。
生前、千佳慕氏は「絵を描くことは神さまへのレポート」と言っていた。だからこそ、最期まで手を休めることはなかった。
与えられた仕事の成果を、与えてくれた神に報告するために。
人間がつくった年齢は肉体的な年齢であって、命や魂に年齢などない。あるとすれば、未熟か成熟かということではないだろうか。
命や魂を輝かせることはいつでもできる。
なんでもいい。
自分にはこれしかないと思えるものができれば、いくつになっても命や魂は輝くだろう。
(151221 第149回)