リコウよりバカが英雄なのだ
赤塚不二夫
ギャグ漫画『天才バカボン』が生まれた背景には、赤塚不二夫のある思いがあった。
「バカに真実を語らせよう」
そこからバカボンが生まれ、バカボンのパパが生まれたという。
歴史を振りかえってみると、時代の転換期に現れる革命児たちは、往々にして「バカ」がつくほど常識はずれである。
彼らにとっての常識は世間の非常識であり、それゆえ、「なにをバカなことを」と鼻で笑われ相手にもされない。
ところが、なにかのきっかけでその非常識が常識へと変わるやいないや、世間は手のひらを返したように、かつての非常識を事もなげに常識として受け入れるのだから、人間とは、まったくふしぎ。
「ただバカっつったって、ほんとのバカじゃダメなんだからな。知性とパイオニア精神にあふれたバカになんなきゃいけないの」
なるほど、バカボンのパパは知性あふれるバカだったのか。
バカボンのお母さんがあんなに素敵なのも納得がいく。
世の中、なにが正しくて正しくないかなんてわからない。
あの人の常識はわたしの非常識。わたしの常識はあの人の非常識。
これでいいのだ。
(160120 第158回)