言葉には、万物を創造する力がある
池田晶子
46歳の若さでこの世を去った文筆家、池田晶子。考えることと言葉での表現に生涯をささげた彼女は、世界は言葉によって形づくられていると提言する。
中学校3年生の国語教科書に取り上げられている『言葉の力』は、思春期の子どもたちに「言葉」の重要性を訴える。
言葉では言い尽くせないものがあれば、言葉が凶器たりえるときもあり、言葉によって救われたり、言葉が支えになることもある。
禅の世界は不立文字で、文字や言葉にとらわれてはいけないとはいうものの、禅僧たちがこれほど多くの禅語を残していることを思えば、やはり伝える手段としての言葉は重要なのだろう。それ以上に、その言葉に込められた思いや魂を感じとることが求められるのだが・・・。
池田氏はいう。
「言葉を大事にすることは、自分を大事にすることである。自分の語る一語一句が自分の人格を、自分の人生を確実に創っているのだと自覚しながら語ることだ。そのようにして生きるのだ」
思いは言葉になり、言葉は思いになっていく。
自分の目の前に現れている事象が、自分が創りあげたものであるならば、この世の中は、人類が作りあげてきた、ありとあらゆる千差万別な言葉のメタファーともいえる。
言葉の力は、神の力にもおよぶ。
(160123 第159回)