寿命という大きな空間の中に、自分の瞬間瞬間をどう入れるかが、私たちの仕事ですね
子供たちは、決して無知でか弱い生きものではない。むしろ、精神も能力も、大人以上のものを持ち合わせている。ピュアであるがゆえ、むき出しになった魂は、がっちりと鎧に身をつつんだ大人たちに簡単に負かされてしまうだけなのだ。
この言葉は、100歳を超えた今もなお現役で活躍される、聖路加国際病院名誉院長、日野原重明氏の「命の授業」を受けた小学生から届いた手紙の一文である。
某新聞にも、日野原氏は、子供たちに話す「命の授業」について述べていた。
「君たちは、みんな命を持っています。心臓は、頭や手足に血液を送るポンプであり、命ではありません。
命とは感じるもので、目には見えない。
空気も、風も、目には見えないけれど大切なものでしょう?
空気があるから僕たちは生きている。本当に大切なものは目には見えないんだ。
命が目に見えないのは、一人ひとりが持っている時間だから。死んでしまったら自分で使える時間もなくなってしまう。
一度しかない自分の時間をどのように使うのか、しっかり考えて生きてほしい。そして、子供のうちは自分のために使っても、大人になったら誰かのために使えるように努力してほしい」
この話を聞いた一人の小学生の命が感応した。
「寿命」という言葉を使った彼(彼女)は、自分に与えられた時間が天からの祝福の時間であることを無意識に感じ取ったのにちがいない。
われわれに与えられた仕事は、祝福に値する時間を過ごすことなのだ。
(160303 第172回)