やりたいことを貫くために場所を選んでいくのは、すごく大切なことかもしれません
西加奈子
直木賞受賞作家、西加奈子女史の言葉である。以前、某新聞で作家になるまでのエピソードを語っていた。
西氏が作家になるべく大阪から上京したのは26歳のとき。就職氷河期ということもあり、周りはフリーターが多かった。そのことが作家を目指す西氏にとっては好都合だったという。
世の中は「場」でできていると言っても過言ではない。「場」がつく言葉が多いことにも、それは表れている。
立場、現場、仕事場、相場、市場、逃げ場、遊び場、場面、磁場など、あげるときりがない。だからこそ、生きていく場所は慎重に見極めねばならない。
何かをしたいと思っても、それが叶わない環境であったり、境遇であることは多い。しかし、ほんとうにそうしたいと思ったら、できないことはない。この日本においては。
果たしてその思いを言い訳で済まそうとしてはいないだろうか。
場が選べないなら、今いるその場を自分の力で変えればいい。変えられないなら、勇気を出してその場を去り選び直してもいい。思いが本物なら、必ず受け入れてくれる人はいる。
器に入った水に墨をたらすと黒く染まるように、器である「人間」の魂は周りの色に染まりやすい。
今いる場所は、自分が求めていた場所か。
あらためてじっくり見つめ直してみてはいかがだろう。
(160410 第184回)