「つつしみ」の心は自然の法則に合致する
引き続き、村上和雄氏の言葉を紹介しよう。前回同様、著書『生命の暗号』から抜粋した。
村上氏は「科学と宗教は同根だ」という。
村上氏だけではない。多くの科学者たちがミクロの世界にマクロの世界である宇宙を感じ、この世を統べる偉大なる存在に頭を垂れるのだそうだ。
「つつしみ」が自然の法則だとする理由は何か。
実は、そこに生命をつなげていく生態系維持の鍵がある。
水栽培で1本の苗から一万数千個もの実をつけたトマトをご存じだろうか。
これは自然栽培ではまずありえないことだ。
なぜそれが可能になったのか。
本来あるべきはずの土がないからである。
植物が育つのに、土は水や太陽と同じくらい重要なもの。しかし、一方で、土は阻害因子でもあるという。
昨今は、この原理を利用して、野菜がもつ能力を最大限に引き出そうと水栽培も盛んになっている。
なぜこれほどの能力があるにもかかわらず、生命の創造主はあえて栄養分でもあり阻害因子でもある土をつくったのか。
「つつしみ」である。
創造主は、それぞれの種がそれぞれの良さを活かしながら共に生きることを望んだのにちがいない。
植物も動物も、あらゆる生命体は同じ遺伝子情報をもっているという。
つまり、われわれ人間も同じように、だれもが「つつしみ」の心をもっているのだ。
「姥捨て山」があった昔、親は子孫を守るために自ら死を選んだ。
これこそ「つつしみ」ではないだろうか。
翻って現代社会はどうだろう。
ますます自然の法則から遠ざかっていくように思えて恐ろしくなる。
本当の意味で阻害因子となるものは取り除いて能力を引き出すことは必要。
とはいえ、あくまでも「つつしみ」の心をもって互いに共存共生していけるよう努力したい。
(160726 第219回)