不伝の伝
松原泰道
龍源寺元住職、松原泰道老師の言葉である。著書『禅語百選』から抜粋した。
101歳で大往生を遂げた松原老師は仏教をわかりやすく教え説いた「語り部」でもあった。
「不伝の伝」とは、読んで字の如く、「伝えようとせずとも伝わる」という意。
つまり「教外別伝」、あるいは「拈華微笑」ともいえるだろう。
「こころ」から「こころ」へ伝わっていくことである。
もっとわかりやすくいうと、
達磨大師の「授とは伝なり 伝とは覚なり」。
伝授する、教えが伝わるというのは、相手が心からその教えを「覚(さとる)」ということ。
そう、「教」も「伝」も「覚」もひとつづきであり、それすなわち「気づき」である。
松原老師のいう「不伝の伝」とは「気づき」なのだ。
子供が親から学ぶもの、弟子が師匠から学ぶものは、言葉以上に伝わってくるその生き様である。
その生き様をみて、この世の真理や内に秘めたものに気づいていくのだ。
(160804 第222回)