人は人を見捨てないものよ。自分自身を見捨てるだけよ
トルーマン・カポーティの著書『真夏の航海』から抜粋した。主人公グレディの言葉だ。
人は人を見捨てないものだろうか?
世の中には「人に見捨てられた」人はごまんといるはず。
親に捨てられた、友人に裏切られた、恋人に見捨てられた……とあげればきりがない。
見捨てられた側からすれば、見捨てられたことがないからそんなことが言えるんだと思うかもしれない。
しかし、この小説を書いたカポーティ自身、親に捨てられた子供だった。
両親の離婚後、彼は遠縁の家を転々とたらい回しにされて育った。
カポーティのその後の人生に、幼少期の影響が大きく関わっているのは言うまでもない。
よくよく考えてみると、最近はとくに、グレディの言葉どおり人に見捨てられるよりも自分自身を見捨てている人の方が多いような気がする。
書店にずらりと並ぶ何某かのハウツー本や、生まれては消えていく「〇〇健康法」なるものがそれを物語っている。
五感を研ぎ澄まし、感覚や感性を磨いたり、自分の体の声に耳をすませば、自分にとって必要なものとそうでないものがわかるはず。
生き方も食べ物も、誰かがいいと言ったものが自分に合うとは限らない。
自分自身に見捨てられた「自分」は、天涯孤独になってしまう。
自分を大切にできる人は、他人も大切にできる。
自分自身を見捨てない人は、他人も見捨てないはずだ。
(160814 第225回)