何が大事かを知ることだ。理屈を超えて見ることだ
ダンテの『神曲』より
地獄編、煉獄編、天国編の3部で構成されるダンテ・アリギエーリの代表作『神曲』。
ダンテ本人が主人公となり、冥界を旅しながら生命の意味、人間の本質を見出していくという有名な古典文学である。
ダンテの師として案内役に登場させた実在の詩人ウェルギリウスがダンテに言った言葉がこれだ。
知ることは大事。だが、もっと大事なのは見ることだと、ウェルギリウスはいう。
そして、こう続ける。
「なぜと思うことはいいが、そのとき下手に理屈を探さぬことだ。人が理詰めで行ける道には限りがある。すべてをあるがままに、景色のように見るがいい。すべては不思議。すべては自然。映る心を知ることだ」
禅の思想に通じるものがある。
「柳緑花紅(やなぎはみどりはなはくれない)」
読んで字の如く、緑の柳と紅い花が目の前に広がっている様子をあらわしている。
どうして柳は緑なのか。
なぜ花は紅いのか(黄色やオレンジ色、いろんな色がある)。
理屈はどうであれ、そうなのだからそうなっている。
科学が発達して、さまざまな疑問が解明された。
だがしかし、生命の不思議、縁の不思議、心の不思議など、「ふしぎ」はまだまだたくさんある。
そのことに思いを巡らせることも大事。
だけど、もっと大切なことは、目の前のことをしっかりと見つめて生ききることだと、ウェルギリウスは教える。
(160826 第229回)