文化は食物と同じで、同化して初めてその人のものとなって働くことができる
岡潔
多変数解析数論の分野で世界的業績をあげ、その名を深く数学史に刻み込んだ岡潔(おかきよし)。
孤高の数学者としても知られ、彼の探求は数学だけにとどまらず、「人間とは」「生きるとは」という人間の本質にまで行き着く。数学者らしからぬ思想は小林秀雄をはじめとする多くの文化人をも魅了した。
ある人は「伝統を継承していくことが文化」だと言った。
現代の日本の文化はどうだろう。
伝統が継承されているだろうか。
デジタル技術の発展によって、今やバーチャルな世界が街中でも展開されるようになった。
一昔前では考えられないことだ。
これを日本文化と呼ぶには早計すぎる。
岡氏が言うように、文化は食べ物同様、その人の血肉になってようやく機能しはじめる。
ただし、消化不良を起こさねば、の話だが。
心身共に健康を得ようとするならば、食材や調味料にもこだわりがでる。
なるべくならば体に良い物をと思うだろう。
毎日食べる物ならなおさらだ。
体が食べる物でできていることは言うに及ばず、精神にまで及ぶことは、今やだれもが知り得るところではないか。
学問、芸術、技術、宗教観などすべて、どんなものでもすぐに効果があらわれるものはない。
時間をかけてひたひたと染み入ることで、その人独自の色があらわれる。
(160913 第235回)