自分に合わない環境に置かれたものは、生きているだけで精一杯
ポール・スミザー
イギリス人のガーデンデザイナー、ポール・スミザー氏の言葉である。
日本の野草に魅了されて来日してから25年以上も経つ彼が、庭師として伝え続けているのは、風土に合った庭づくりをすること。人間はあくまでも植物が自力で生きていけるよう環境を整える手伝いをするだけなのだと言って憚らない。
自然を相手に仕事をしている人が声を揃えて言うのは、「生き方は自然界から学ぶ」ということ。
自然の理にかなった生き方をしていれば、まちがいはないのだと。
スミザー氏の言葉には続きがある。
「健康な植物は、自分を守るための武器をもっています。たとえば、葉っぱが虫に食われるとガスが出る。周りの植物はそのガスを吸うと『隣がやられているぞ』と気づいて、自分のタンニンを増やす。そうすると、虫はまずくて葉っぱを食べられないから寄ってこない。反対に、虫は困っている植物はすぐわかるから、あっという間に寄ってきます」
合わない環境に植えられ、不健康になった植物は、武器もなく自分が生きていくだけで精一杯。
健康な植物は、自分の命を守るのはもちろん、周りの仲間の命も守っているのだ。
「植物」を「人」に変えて読んでみてほしい。
生きていくだけで精一杯になってはいないだろうか。
自分の武器は何なのか、それがわかれば自分も周りも幸せにできるだろう。
(161004 第242回)