ゴールドラッシュのときに儲けたのは、金を掘っていた人ではなく、ショベルやテントを売っていた人だった
ウォーレン・バフェットと並ぶバリュー投資の巨匠の一人、アメリカのファンド・マネージャー、ピーター・リンチの言葉である。
「証券会社やアナリストの言っていることより、自分の気づきと調査を信じる」ことを信条とし、企業の歴史やストーリーを大切にする彼は、まず日常に目を向けろと喝破する。
一攫千金を夢見て金堀りに精を出すのはいいが、ショベルやテントを買って散財してしまっては元も子もない。
ショベル売りやテント売り、果てはショベル製造者やテント製造者の懐を肥やしていることを知らない愚か者は、いつの時代にもいるものだ。
この地上で起きることはすべて、天地自然の理に拠っている。
生と死はもとより、あらゆる自然現象がそうであるように、ビジネスの世界や経済の動きもそれに違わない。
ピーター・リンチが唱える株式投資の要諦は、いたってシンプルである。
「成功するためにはトレンドを追いかける必要はない」
「調査をしない投資は手元のカードを見ないでポーカーをしているようなもの」
「業績も財務状況も申し分ないにもかかわらず、事業内容や社名が地味な会社は最高の投資対象」
「投資判断は株価を見て行うべきではない。株価はもっとも注目される指標だが、同時にもっともあてにならない指標である」
など、それ以外にも、世の中の「流行」とは対極の「不易」を説く。
彼の一言を心得ていれば、天地自然の法則に逆らわず、自分らしい人生を送れるにちがいない。
まちがっても、この格言を読んでいる人は、株で一儲けしようなどとは思わないだろう。
(161219 第267回)