人間、沈まないとジャンプはできない。それが謙虚さであり素直さである
野村克也
元プロ野球選手であり、コーチ、監督、評論家も務める「ノムさん」こと野村克也氏の言葉だ。
彼の毒舌トークは有名だが、その中には愛と真理がちりばめられている。
ある人が言った。
「良い体験よりも嫌なことや失敗したときの悪い体験を思い出すことが多いのは、もしかすると、おなじ過ちをくり返さないようにという動物の習性なのかもしれませんね」
なるほど、日々命の危険にさらされている野生の動植物たちは、危険を察知する能力が極めて高い。
仲間の死や、自らに及んだこれまでの危機によって学んでいるのだろう。
自分の力を過信すれば命を落としかねないと。
外敵から身を守るためには慎重にならざるを得ないのだ。
人間も同じ。
成功体験よりも失敗した経験から学ぶことはことさら多い。
失敗の度合いが大きければ大きいほど、それまでの自分の至らなさを思い知る。
低く深く身を沈めれば、謙虚と素直さという柔軟なバネを手に入れることができるだろう。
(170109 第274回)