無事なとき、ひまな人には、心のゆとりは生じようがない
外山滋比古
お茶の水女子大学名誉教授であり文学士の外山滋比古氏の言葉である。
外山氏は評論家、エッセイストとしても高名で、著書『思考の整理学』は大学生のバイブルとも言われているそうだ。東大などの書店では毎年上位に入っているという。
一見、この言葉は間違いではないかと思ってしまう。
無事なときや、ひまな人だから心にゆとりや余裕があるのではないかと。
しかし、外山氏はこう断じる。
「心のゆとりは“ある”ものではなく“つくる”ものであり、“発見する”ものである」と。
時間があるから明日でいいや、といって、結局何もやらない。
仕事一筋でやってきたから定年後は趣味もなくて時間を持て余している。
ということを、他人事だと笑っていられない人は多いだろう。
忙しい時の、ちょっとした贅沢は心をゆたかにしてくれる。
美酒に酔ったり、音楽を聞いたり、読書をしたり、美しい自然に触れたり…。
何もすることがないときよりも、それは遥かに。
やりくり上手は余裕をつくる。
時間しかり、お金しかり。
「ゆるみっぱなしの糸ではゆとりは生じようがない。はりつめた糸だからこそ、あえてゆるめるところに次の緊張の可能性が生れる」
我が意を得たりである。
(170118 第277回)