私は私より偉くもないが、また私よりつまらぬ人間でもないのです
高神覚昇
仏教学者の高神覚昇氏の著書『般若心経講義』から抜粋した。この著書は講義録というだけあって読みやすく、難解な般若心経も、なるほどそういうことかと腑に落ちる。一読あれ。
ロングフェローの「建築士」という詩にはこう書いてある。
「世の中に、無用のものや、卑しいものは、一つもない。
すべてのものは、適所におかれたならば、最上のものとなり、
ほとんど無用のごとく見えるものでも、他のものに力を与えるとともに、その支えともなる」と。
朝焼けや夕焼けの空も、きらきらときらめく木漏れ日も、自然が見せる美しい風景は、すべて塵のしわざだという。
塵や埃にも役割がある。
しかも、こんなに素晴らしい役割が。
美しい自然をあるがままに映しだすのは、塵や埃があってのこと。
しかし、塵や埃は、ただ淡々と空中を舞っているだけ。
わたしはわたし。あなたはあなた。
わたしはわたしの本分を尽くすのみ。
一体、だれがわたしのように空中を舞ってくれます?
塵や埃の、そんな声が聴こえてきそうだ。
(170130 第281回)