私たちの財産は、私たちの頭の中にあります
モーツァルト
神童と呼ばれ、古典派音楽の代表であるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの言葉である。
なるほど、幼少期に体験した父との演奏巡業から生まれた言葉にちがいない。
持てる才能を活かしきり、35歳という若さでこの世を去ったモーツァルトの、その天才的な頭脳はまさにこの世の財産となった。
どれだけ多くの金品を持っていようと、あの世には持っていけないし、いつ何時、何が起こって失うかはわからない。
ましてや、物質的な豊かさが、必ずしも精神的な豊かさにつながるとは限らない。
形あるものは壊れる。
目に映るものは儚い。
この世は生々流転、無常の世界なのだから、それはそれで大いに意味がある。
だからこそ、モーツァルトのこの言葉は輝きを増す。
生きている今、この頭脳を活かし切らずにいつ活かすのかと。
衰えていく肉体に反して、頭脳は使えば使うほど鍛えられて若々しくなってゆく。
財産は、ただ持っているだけでは増えもしないし、むしろ減っていくか澱んでしまう。
上手に使って運用しよう。
そうすれば、財産はどんどん増えて、後世にもいいかたちで残せるだろう。
(170601 第321回)