「色気」はすなわち「色彩感」。その人特有の色彩、「味」というものが、心情にも肉体にもにじみ出すことなのだと思う
円地文子
劇作家であり小説家であった円地文子の言葉である。
古典文学に造詣が深く、『源氏物語』の現代語完訳は与謝野晶子や谷崎潤一郎についで広く読まれている。円地は谷崎に可愛がられたというから、女っぷりはもちろん、知的で魅力ある女性だったのにちがいない。
「色気」という言葉はどうも、性的なものと結びつきやすい。
現に色っぽい人は異性の目を引くし、色っぽく見せようと表面的につくり込む人もいる。
そもそも「色気」と「色っぽい」は違うのだろう。
本当の色気というのは意識してつくれるものではない。
そこはかとなく漂ってくるもの。
内面からじわりと滲み出てくるもの。
無意識に身にまとったオーラこそ、色気、色の気である。
色気のある人というのは男女の別なく、人間的魅力にあふれている。
だから人は惹きつけられる。
まるで虫たちが芳香な花に集まるように。
その人の個性はその人のカラー。
内面をしっかりと磨けば、おのずと色は鮮やかになり輝きをますだろうし、あせらずじっくりと熟成させることで、芳醇な香りが満ちあふれることだろう。
(170604 第322回)