大人というものはどんなに苦労が多くても、自分の方から人を愛していける人間になることなんだと思います
やわらかいタッチと優しい色使いを一目見れば、誰もがその人とわかる。児童画家であり絵本作家のいわさきちひろ。彼女が描く子供たちは、むじゃきな子供というより、おとなしい、ちょっとさみしげな、どこか影を抱えているような子供が多い。
世界中の子供たちが幸せでありますようにと願った、ちひろ。その思いが託された作品は、今なお多くの人を魅了してやまない。
子供はみな、愛されるために生まれてきた。
だからこそ、子供たちは大人の愛を一心に請い願う。
「ぼくをみて」「わたしをみて」と、執拗なまでに自己主張する。
人間だけではない。
動物の子はみな、愛を請う。
赤ちゃんがあんなにも愛らしいのは、みな愛されるため。
可愛がられ、愛されなければ生きてはいけないからだ。
ゆえに、存在そのものへの無償の愛が生まれる。
無償の愛は与える愛。
自らを犠牲にしてでも、我が子を守ろうとする母性や父性の愛である。
しかし世の中は、愛を求め彷徨っている人の多いこと。
「愛されるため」「認められるため」などの謳い文句が街中に溢れている。
残忍な犯罪が増えているのも、そのせいだろう。
愛を請い願うのは、子供の特権ではなかったか。
大自然を見てほしい。
この宇宙の愛に気づいてほしい。
見返りを求めず、ただ一心に我々を信じ愛し続けてくれているではないか。
そこに天の願いが表れているではないか。
「どんなに苦労が多くても、自ら愛していける人になりなさい」と。
(170626 第329回)