興隆の要因となった同じものが、衰退の要因になる
塩野七生
イタリア史、古代ローマ史を語らせたらこの人の右に出る人はいないであろう、塩野七生。
2000年にはその功績を称え、イタリア共和国功労勲章グランデ・ウッフィチャーレ章を受賞している。
ローマ史に残る英雄たちに本気で恋い焦がれた女史が、歴史を紐解き、彼ら英雄たちの興隆と衰退の原因を探り至った結論が、これだ。
興隆と衰退に共通する要因とはなにか。
はっきり言ってしまえば、「欲」である。
前回、紹介した豊臣秀吉の一生を見れば一目瞭然。
百姓から天下人への道のりは、まさに欲なくしてありえなかった。
そして、その成れの果ても。
金ぴかの茶室こそ、その表れではあるまいか。
純粋な出世欲も、行き過ぎるとただの強欲になってしまう。
欲が悪いのではない。
それを操る人間に問題がある。
どんなに時代が変わろうと、人間の本質はそう変わらない。
文明が発達し、技術の発展がめざましい現代であっても、それは同じこと。
人は昔から欲と闘ってきた。
しかし、欲は自己からうまれたもの。
闘う必要はない。
ガンと同じで、それも自分の一部だと思ってうまく付き合っていけばいい。
(170702 第331回)