人間というものは、現に持っている物に加え、さらに新たに得られるという保証がないと、現に持っている物ですら保有しているという気分になれないものである
マキャヴェッリ
『君主論』でお馴染み、イタリア、ルネサンス期の政治思想家であり、フィレンツェ共和国の外交官であるニッコロ・マキャヴェッリの言葉である。君主論に並んで有名な『政略論』からの抜粋。
今、マキャヴェッリが注目を浴びている。世界情勢が荒れる中、今こそマキャヴェッリから学ぶべきだと、フランスの中世史家、パトリック・ブシュロン氏も某新聞で警鐘を鳴らしていた。
この言葉を要約すれば、こういうことだ。
「足りていることに気づかない」
持っているものはいろいろあるのに、新しい何かが得られなければ、持っているものさえ無いに等しいと感じる。
どんなに手にしても、足りていない、持っていないと勘違いする。
老子の声が聞こえてきそう。
「足るを知れ!」と。
外側にばかり目を向けず、自己の内側に目を向けろと。
「あるもの」にフォーカスすれば、自ずと「ないもの」は減っていく。
あるものを上手く生かせば、欠けたところは繕い、空白は埋まっていく。
人間は忘れる生き物だから、一日の終わりに思い返してみるのもいいだろう。
自分がもっているもの、足りているものは何かを。
今も昔も、人間の本質はそう変わらない。
だからこそ、歴史に学び、知恵に変えて生きてゆくのだ。
本当の学びとは、そういうものだろう。
(170708 第333回)