今今と今という間に今ぞ無く 今という間に今ぞ過ぎゆく
道歌
道歌とは、道徳的な教えをわかりやすく歌に詠んだものである。
道徳的というと、いかにも正しい道という感もいなめないではないが、この歌のように禅語をにおわせるものも数多くあって、知らず首を縦に振ってしまう。
歌になっている分、かたくるしさも少し和らぐのもいい。
「而今」と書いて「じこん」と読む。
「いま・ここ」である。
今この瞬間を生きることの大切さは、何度も伝えてきたし、昨今では合い言葉のようになっている。
しかし、本当の「今」って?
今と思っている今はもう、瞬時に過ぎ去ってしまっているのに…。
なんてことを考えていたら、この言葉にばったり出会った。
天からのお告げか…。
「あんた、もうかなり『今』は過ぎてまっせ。ほれ! 今の今も! しょうもないことばっかり考えんと、ええかげん目覚ましなはれ!」
と、勝手に想像して焦りながらも「今」を楽しんでいる筆者であった。
ゲーテも言っているではないか。
「最上の救済法は、この現在の瞬間を精一杯生きる事だ」と。
耳をすませば、「今」の心の声が聞こえるだろう。
もちろん、心も刻々と時を刻みつづけているだろうから、次の瞬間の声音は違うはず。
ただそうやって、内側と外側の「今」を味わうだけで「今」が輝き、今の連なりの人生も輝くのではないだろうか。
(170812 第343回)