Pain is inevitable. Suffering is optional.=痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)
ルーマニアのマラソン選手でオリンピック銀メダリストのリディア・シモンの言葉である。村上春樹の著書『走ることについて語るときに僕の語ること』に書いてあった。彼女がマラソン中に繰り返して唱えている言葉だそうだ。
村上春樹は著書の中で、この言葉についてこう語っている。
「たとえば走っていて『ああ、きつい、もう駄目だ』と思ったとして、『きつい』というのは避けようのない事実だが、『もう駄目だ』かどうかはあくまで本人の裁量に委ねられていることである」と。
たしかにそうだ。
「しんどい」とか「つらい」「悲しい」という状況は誰にでもある。
しかし、それを「だからもう無理」とか「ダメだ」と思うかどうかはその人次第。
同じ状況に置かれても、みんなが同じ反応を示すとは限らない。
強制収容所に収容されたフランクルは言っていた。
「自分の未来を信じることができず苦しみに耐えきれなかったものは、収容所内で破綻した」と。
どんなことも、自分が今どう感じているのかを見極めることは必要だ。
その上で、冷静にその状態を受け止めれば、感情的にならずにすむ。
辛いと感じているなら「そうか、今、自分は辛いんだな」と、ちゃんと受け止めてあげる。
怒りを感じているなら「わかるわかる、それは腹が立つよね」と、納得してあげる。
そうやって、自分と対話すればいい。
そうすれば、いちいち感情に振り回されることもなく、どういう行動に出ればいいかがわかる。
フランクルの言葉にあるように、
「人間はどこにいても運命と対峙させられ、ただもう苦しいという状況から精神的になにかをなしとげるかどうか、という決断を迫られる」のだから。
(170906 第351回)