巨人の肩に乗っているから、遠くを見ることができる
12世紀ルネサンスのフランス、プラトン研究の中心人物であったシャルトル派のベルナール・ド・シャルトルの言葉である。
過去の偉人や賢人たちが遺した文化的遺産、研究成果などを巨人にたとえ、その力を借りることの大きな意義を唱えている。
人は一人では生きていけない。
生まれるときや死ぬときが一人なのだとしても。
生きているときは、一人で生きている人は誰もいない。
食べ物も着る物も、身の回りにあるすべてのものは、誰かの手によって作られたもの。
そこには、何千、何百という人が関わっていることだろう。
さらに言えば、知恵を出し合った先人たちもいるにちがいない。
ああでもない、こうでもないと考えるとき、ふと、かつて聞いた話がよぎったり、本で知り得た情報が助けになることがある。
記憶力は自分のものであったとしても、元となった知恵や知識は、自分ではない誰かのものであったはず。
その誰かもまた、違う誰かの知恵や知識を拝借している。
一冊の本の中に、一人の人間の中に、どれだけ膨大な知恵や知識が収められていることか。毛細血管のように張り巡らされた縦軸と横軸の縁を考えると、気が遠くなるばかり。
遺された知恵や知識はまるで、ころころと転がり七転八倒しながら大きくなった雪だるまのよう。
一人でできることには限界がある。
巨大なスノーマンの肩を借りて、人生をより広く、深く、学びながら、楽しんでゆこう。
(171106 第371回)