時に動き、時に静なれば、気めぐりて滞らず
江戸時代の儒学者兼医者・薬学者であった貝原益軒の『養生訓』より抜粋。益軒は現代のような飽食時代が到来することを予期していたのであろうか。
「珍美の食に対するとも、八、九分にてやむべし。十分に飽き満るは後の禍あり」。現代人なら腹七分目くらいがちょうどいいかもしれない。
心身一如、心と体の健康のためには、何ごともほどほどに。それが長生きの秘訣なのだと益軒は言う。
「病は気から」と言う。
病気になるもならないも、治るのも治らないのも、すべては気の持ちよう、ということだろう。
つまり、病の原因は「気」であると言っているのだ。
この場合の「気」は、気分などの精神的なものにちがいない。
しかし、もっと深読みすれば、物理的にも当てはまることがわかる。
宇宙全体に流れている気というエネルギーは、人体の中にも同じように流れていると言われているが、この気が滞ったとき、病は発症する。
「気が体にあまねく行き渡った状態」が健康であると、益軒は説く。
気があまねく行き渡った大宇宙、大自然は陰と陽の関係で成り立っている。
陰と陽、静と動が定まったとき、心身はすべからく健康になる。
バランスである。
時に動き、時に静なれば、気めぐりて滞らず。
一日の、一年の、一生の中に、動くときと動かないときをつくる。
動くときは外へ向かって、動かないときは内に向かって。
時に激しく、時に穏やかに。
バランスが乱れると、いろんなことが乱れる。
まずは乱れた呼吸を整えよう。
そうすれば、体に気がめぐり、心も落ち着き、心身ともに健康になれる。
(180110 第391回)