自分の力の内にあって自由になるものと、自分の力の内になくて自由にならぬものを峻別せよ
エピクテトスとも呼ぶらしい。紀元前一、二世紀ごろのローマの哲人である。かのソクラテスにも影響を与えたという。某新聞でこの言葉に出会い、あたためる時間の必要性も感じなかったので取り上げてみた。編集委員の芥川喜好氏のコラムと言えばわかるだろうか。
紀元前からの忠告ということは、人間の本質は今も昔もそう変わらないということか。
芥川氏の見解はこうだ。
自分の力の内にあって自由になるものとは、思考、行動、意欲、拒否など、自分の意志通りにできるもの。
反対に、身体、所有物、評判、社会的地位などは、自分の力の外にあって自由にならない、力の及ばないものであると。
神学者、ラインホールド・ニーバーの言葉を思い出した。
「変えられるものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして両者を識別する知恵を与えたまえ」
人は弱い生き物。
感情に流され、周囲の空気に流されやすい。
ことに「水に流す」文化を連綿に受け継ぐ日本人は、流されることをよしとする傾向がある。
時代は流れるのだから、その波に乗ることはいい。
しかし、自ら舵を取らねば荒波に飲み込まれるか、荒涼とした海をあてもなく漂うことになる。
目的地を定めるのも、船をあやつるのも自分自身だと心得たがいい。
だれかの船に便乗すれば、自分の命を相手に委ねることになる。
この人とならと、心からの信頼を寄せる船に乗り込むのなら覚悟をきめる。
時代の波にうまく乗るためには、変わらないもの(不易)と変わるもの(流行)を見極める。
変わらないものの中にあって変化し続ける自己、自由意志で変化できる自己を知ろう。
(180128 第397回)