愛しているところに美があるからです
白地に赤で有名な三越の包装紙をデザインしたのがこの人。画家の猪熊弦一郎である。無類の猫好きで知られる彼は「いちどに1ダースの猫を飼っていた」といい、愛してやまない猫たちを作品のモチーフにすることも多かった。
マティスに師事したというだけあって、彼の描く猫たちはアーティスティックでありながら、まるで子供の絵のようなのびやかさがあり、おちゃめなにゃんこたちにメロメロになってしまう。
猪熊氏が猫をかく理由はこうだ。
「愛しているものをよく絵にかくんです。愛しているところに美があるからなんです」
愛しているところに美がある。
そう。
美しいから愛するのではない。
愛するから美しくなるのだ。
どんなに美しいものも、愛(め)でなければ美もかすむ。
大自然が美しい調和で成り立っているのも、この世界を創造した大いなる存在、サムシンググレートと呼ばれる見えざる力の愛がそうさせたのだとしたら、その愛によって生まれたわれわれ一人ひとりは、本来だれもが美しい存在であるはず。
愛に満ちた人は美しい。
なぜなら、厳しさを知っているから。
厳しさは優しさであり、愛である。
この大自然がそうであるように。
どんなに愛していても、憎らしくなることもあれば、腹立たしくなることもある。イライラしたり、怒りが爆発しそうになったり。
しかしそれも、愛の証拠。
愛しているから厳しくもなり、優しくもなる。
愛しているところに美があるのならば、自分を愛する人はきっと美しい。
自分に対して厳しくも優しくもなれるから、この大自然のように、愛がいっぱいつまっていることだろう。
(180213 第402回)