死ぬ時節には死ぬがよく候、是ハこれ災難をのがるゝ妙法にて候
良寛
良寛が交誼を結んでいた山田杜皐に宛てた手紙の一文である。杜皐は良寛より16歳若い与板(新潟県長岡市)の町年寄、酒造業を営んでいた山田家9代太郎兵衛重翰で、良寛とは親戚筋にあたる。
人生100年時代と言われて久しい。
ところが健康で一生を過ごせるかとなると話は変わる。
男女とも、平均寿命と健康寿命の差はおよそ10歳。
晩年の10年間を不健康な状態ですごしていたり、介護がともなって生きながらえているのが現状のようだ。
それを危惧してか、昨今はかつてないほどの健康ブーム。
健康食品しかり、健康グッズしかり、体力トレーニングにメンタルトレーニングなどなど、ちまたには健康を謳った商品が目白押しである。
一方で、食べ放題、飲み放題、美食、飽食、スマホ、デジタル……これまた、かつてないほどに贅の限りをつくした、健康とは無縁のように思える時代の到来である。
はて、人間はいったい何をしたいのだろう。
健康になりたいのか、それとも不健康になりたいのか。
生命の長短を決めるのが人間だとしたら、寿命は天のはからい。
人間の我欲だけで寿命を伸ばそうとすれば、どこかに歪みがおきてもおかしくはない。
死ぬ時節には死ぬがよく候、是ハこれ災難をのがるゝ妙法にて候
死ぬときは死ぬのだから、生きているうちは生きていよう。
天の怒りを買わぬように。
(180324 第415回)