頭の中にいろんなことをそのまま放り込んでおくと、消えるべきものは消え、残るべきものは残ります
小説家、村上春樹を知らぬものはいないだろう。好き嫌いは別として、彼が世の中に与えた影響は大きい。80年代以降、若者を中心にそのムーブメントは世界にまで広がった。彼の熱狂的ファンを称してハルキストというが、ウィキペディアにまで記録されているのには驚いた。この言葉は、自伝的エッセイ『職業としての小説家』からの抜粋である。
記憶というのは不思議なものだ。
覚えておきたいことは忘れても、忘れてしまいたいことほど覚えていたりする。
自分にとって何が必要で何が必要でないかを、脳が瞬時に取捨選択しているのだろうか。
情報化社会の世の中にあって、何が必要で何が必要でないかを見分けるのはむずかしい。
ましてや、膨大な情報を記憶するなどできっこないし、する必要もない。
本当に必要な情報を取り入れ、記憶するにはどうすればいいか。
作業療法士の菅原洋平氏は、著書『40代からは「記憶法」が変わります』の中で、「情報断食」を勧めている。
お腹いっぱい食べると内臓に負担がかかるように、脳も「お腹いっぱい」にすると働きが鈍くなるのだとか。
食前に覚えたことは食後よりも忘れにくいというのも、空腹によって細胞が危機感を覚えるからだろう。
断食によって体の不調を整えたり、記憶力を強化したりと、生命はなんとか生き延びようとフル稼働する。そして、動物的勘が働き、必要な栄養(情報)を取捨選択できるようになる。
また、記憶には次の4つの段階があるのだそうだ。
1. 覚えること(記銘)。
2. 覚えておくこと(保持)。
3. 思い出すこと(想起)。
4. 忘れること(忘却)。
消えるべきものが消え、残るべきものが残るのは、本当に必要なものだと脳が判断を下すからだろう。
何を残すのか、何が残っているのか。
今あるものを見つめれば、本当に必要なものが見えてくる。
(180723 第452回)