人生には、両親や恋人、情熱的な経験と同じ位置を占める本がある
著書『自己信頼』で知られるラルフ・ウォルドー・エマソンの言葉である。哲学者であり思想家、作家、詩人、エッセイストと多才ぶりを発揮し、数々の著書を残している。多くの偉人、賢人たちにも影響を与えたエマソンの言葉は何度か本欄でも紹介した。
読書の大切さは今さら言うまでもない。
そのことに気づいた若者は、お手軽な情報とはすっぱり縁をきって、読書の楽しみを見出しているようだ。
電車の中で、あるいはカフェで、読書を楽しむ若者を見かけることも多くなった。
本のかたちも紙であったり、デジタルであったりといろいろある。
とはいえ、日々更新される情報を、何とはなしに見ているスマホ族の数の方が圧倒的に多いのは事実だろう。
SNSやゲーム、ユーチューブなどで刺激を求める人は後を絶たない。
しかしそれらの多くは、表面的なものでしかなく、全体像がみえづらい。
SNSで隣の芝生をみたところで、「ああ青くていいなあ」「なんてうらやましい」と嫉妬心に火をつけるだけではないか。
それにくらべ、本はいい。(もっとも良書に限るが)
フィクションでありノンフィクションであり、人の人生の一部始終を知ることができるし、何より疑似体験ができる。
過去にも未来にもトリップできる。
生きるとは、死ぬとは、に触れることができる。
たった一冊の本で人生が変わることだって。
アメリカの書評家、マイケル・ディルダも言っている。
「実のところ、読書と本の親密な関係は、恋人同士のそれに近い。本との関係が深まると、本は生活をくるみ、新たな可能性や自己の見つめ方を示す。そして、未来は喜びと悲しみの瞬間で満ちる。関係が終わっても、記憶はそのときに得られなかった豊かさを蓄えていく」と。
刺激を求めるなら本を読もう。
恋愛は人を魅力的にする。
本との恋を楽しもう。
(180729 第454回)