富とは造物主からの恵みであり、分別のある人がまっとうな目的のために、天賦の才を活かして生みだしたものである
ウィリアム・モリス
自然回帰ゆえか、近年、よく耳にするボタニカルという言葉。植物由来の商品やデザインが人気のようだ。
ボタニカルと聞いて思い出すのがウィリアム・モリス。モダンデザインの父と呼ばれ、いち早く植物柄をデザインに取り入れたモリスはデザイナーであり詩人でもあった。天賦の才を発揮したモリスの言葉だからこそ、納得がいく。
程度の差はあれど、人は富を求め日々あくせく働いている。
物質的にも精神的にも、富が心の平穏に無関係ではないことを知っているから。
しかし、物質的に恵まれた富者がみな幸せであるかといったら、そうとも言えない。
莫大な財産があっても不平不満を言う人はいるし、満たされない何かを抱えている人もいる。
地位や名誉を得たからといって、真の喜びを得られるとも限らない。
では、本当の富とは何か。
老子、辯徳第三十三に、かの有名な言葉がある。
「足るを知る者は富み、強めて行う者は志有り」と。
解釈はいろいろあるだろうが、モリスの言葉はまさにこのことではないかと思う。
ないものねだりすることなく、天から与えられた特性に気づくこと。
その特性を磨き、生かしていけば喜びは得られる。
この喜びこそが本当の「富」というものなのだろう。
(180804 第456回)