寸法で組まずに癖で組め
「最後の宮大工」と言われた西岡常一棟梁の言葉。塩野米松氏の著書『木の教え』より抜粋した。西岡棟梁の残した言葉は数多くあるが、木を知り尽くし、人を知り尽くした人の言葉はずしりと重い。
木には癖がある。
その癖を見抜くには、伐りだしてからしばらく寝かせなければならないという。
時間が経つと、木は本性をあらわす。
ねじれや歪みは、その木が生きてきた証でもある。
それは人も同じ。
長年生きてきた環境で身についた癖は、そう簡単には正せないし、必ずしも正さなければいけないというわけではない。
正すのではなく、生かす。
一般的な基準に合わせるのではなく、癖を生かす方法を考えるのだ。
縦がいいのか、横がいいのか、前がいいのか、後ろがいいのか、上がいいのか、下がいいのか。
木も人も、癖という個性を生かせば使い道はいくらでもある。
ケヤキの木は暴れる木なのだそうだが、注文どおりの寸法を出すために大きめに製材し、出荷までに徐々に補正していくという。
最初から枠にはめようとするから窮屈になる。
しばらく様子を見て、全体のどの部分なら枠に収まるかを考える。
どの部分なら、どこまでなら妥協できるかと。
癖を知るためにも、普段の行動をじっくりと観察してみよう。
そうすれば、何が得意で何が不得意かがわかるだろうし、何に強くて何に弱いのかがわかるだろう。
(180920 第471回)