今日は明日の2倍の価値がある
アメリカ史上、最も偉大な政治家の一人、ベンジャミン・フランクリン。米国独立に重要な役割を果たし、100ドル札にも描かれている彼の時間に対する観念がこれ。自伝書『フランクリン自伝』には、よりよき人生を送るための13ヶ条が示されているのだが、300年以上も前に書かれたとは思えないほど、現代にも十分通じる項目がずらりと並ぶ。事実、現代の意識の高い人たちは彼と同じことをやっているはず。
学校教育をほとんど受けず、10歳で社会に出たフランクリンが「アメリカ建国の父」とまで呼ばれるようになったのは、おそらく時間の価値をいち早く見抜いていたからだろう。
信条を徳目として掲げたのも、いい人生にするためには、今の悪い生き方や癖を少しずつ変えていかなければいけないと考えていたからに他ならない。
この徳目の中にも、いくつか時間に対する観念が説いてある。
たとえば、
「なすべきことを実行する決心をする。決心したことは必ず実行する」
「物はすべて場所を定めて置くこと。仕事はすべて時を定めてなすこと」
「時間を空費してはならない。つねに何か益あることに従うこと。無用の行いはすべて断つこと」
など、「時は金なり」という言葉を生んだだけあって、かなりストイックに決め事を作っている。
「『いま』と言っただけで、『いま』でなくなる時間。その少しまえと、少しあとと、くもの糸ほどの差にはさまれながら、よこへよこへとひろがっていく・・・」
あまんきみこの童話『北風をみた子』の中にあった一文と、フランクリンの言葉が重なった。
今日は明日の2倍の価値がある。
今、この一瞬は、まばたきひとつで過去になる。
決して戻ることのない今この時を、どう過ごすのか。
「いま」と言っただけで、「いま」でなくなる少しまえと少しあとにはさまれた時空には、やっていることと考えていることがつまっている。
ふくれあがった「いま」の時間は、やがて描く未来で弾けることだろう。
(181021 第481回)