生きてみたら?
スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫の言葉。正確に言えば、「白隠のキャッチコピーを付けるなら?」という質問に対する答えがこれだった。「まさに!」と膝を打った。これこそ、今の時代にぴったりな言葉ではないかと思ったからだ。鈴木氏と3人の僧侶との対談集『禅とジブリ』から抜粋した。
ジブリ作品には「今を生きる」がテーマになっているものが多いという。
キャッチコピーにも「生きる」という言葉がつけられているものがある。
たとえば、
『もののけ姫』なら「生きろ」。
『風立ちぬ』なら「生きねば」。
時代背景を見てみると、その言葉はなんとも合点がいく。
自然の中で生きる動物と人間たちの戦いを描いた『もののけ姫』。
野生の生き物たちの生存競争は、とにかく「生き延びる」ことが重要だろう。
人間社会に当てはめるなら、戦時中の心境にもあてはまりそうな気がする。
一方、『風立ちぬ』は、愛する者の死と、自らの手でいずれ人の命を奪うことになる飛行機を作ってしまった男の「死」に対する複雑な思いを描いているのだろう。
戦後、生き延びた人たちの多くは、おそらく、彼らの分まで「生きねば」という思いだったのではないだろうか。
転じて今はどうか。
社会のしがらみや、情報過多で生きづらさを感じている人は多い。
だから、とりあえず生きてみたら?
「それぐらいでいいんじゃないか。多少の努力はしなくちゃいけないけどね」と鈴木氏。
白隠さんや仙厓さん、良寛さんのように、肩の力を抜いて生きてみたら、この世も捨てたもんじゃない。
生きいてれば、いろいろあるさ。
いろいろあるからおもしろい。
生きてるだけで、まるもうけ(dy 明石家さんま)。
(181115 第489回)