人間の能力は、それが属している社会の質に影響される
数々のヒット作を世に送り出した小説家、司馬遼太郎の言葉である。資料を調べているときが一番おもしろいと言ったのは、彼だったろうか? 歴史小説を書くにあたって、史実の調査は欠かせない。生前に読み込んだ資料も半端な量ではなかったはずだ。生者死者問わず、数多くの人間と対峙してきた司馬だからこその言葉だと思う。
良きにつけ、悪しきにつけ、人はだれかや何かに感化されて生きている。
社会を見渡せば、類は友を呼ぶことを証明したコミュニテもたくさんある。
似た者夫婦、似た者同士。
いつも一緒にいれば、似てくるのは当然だろう。
だからときどき立ち止まって、
マンネリ化していないか、なあなあになっていないかを確かめることも必要。
マンネリもなあなあも、互いの成長を止めてしまうから。
自分よりも足が速い人と競争すると、自己タイムは上がるし、
自分より頭の良い友人と勉強すると、成績も伸びる。
得てして人間は、一緒にいる人の影響を受けやすい。
力を伸ばしたいと思ったら、自分より優れている仲間をもつといい。
たくさんの友人を持つ必要はない。
「この人!」と思う友人が、たった一人いるだけで能力は上がる。
大量生産大量消費で質より量を求める時代は、もう終わった。
これからは、モノも人も、量より質がものをいう。
能力を伸ばしたければ、まずは自分がどの社会に属しているかを客観的に知る必要がある。
人間力、人間の質は、そうやすやすと手に入るものではない。
腰を据えて、じっくりていねいに、作り上げていくしかない。
(190802 第563回)