満足は天然の富だ
古代ギリシャの哲学者、ソクラテスの言葉をふたたび。さすがソクラテス。「無知の知」同様、端的に本質をついた言葉である。孔子の「足るを知る者は富む」と同義だろう。
孔子の晩年にソクラテスが誕生していることを思えば、ひとりの智者が去ってゆくと、新たな智者が必ずどこかで生まれるようになっているのだな。
ある調査によると、人間の悩みはだいたい3つに集約されるそうだ。
それは、
健康、お金、家族。
「健康」は言うまでもなく心身の健康。
「お金」は資産、仕事、あるいは生き方なんてのも入る。
「家族」は介護や子育て、親族、夫婦仲、住居なども含まれる。
厳密に調べれば、もっといろいろあるだろうし、人の数だけ悩みはある。
それらの悩みを一挙に解決してくれるものこそ、ソクラテスの言葉だろう。
満足は天然の富。
人の悩みの多くは、不足を感じることからはじまる。
あれがない、これがない、もっとこうだったら、もっとほしい、もっと、もっと…。
欲を出したらきりがない。
人間の成長も文明の発展も不足からはじまったものだから、すべての欲が悪いとは思わないが、不足が成長ではなく悩みになってしまうのは問題だ。
どんなに資産家でも、どんなに才能に溢れていても、まだまだ足りないと不平不満を言う人もいる。
一方で、病気でも、お金がなくても、いつもにこにこしている人だっている。
どちらが幸せかは一目瞭然。
与えられた境遇を受け入れ、工夫しながらその状況を楽しめる人は心が豊か。
どんな状況をも満足できる人は、生まれながらに富を手に入れているのと同じ。
これで満足。
これも満足。
満足感を味わえば味わうほど、ありのままの天然の自分自身が富であることに気づくはず。
天然自然は不足のない、満たされた世界なのだから。
(191129 第596回)